冠詞と言語学

「人間になにがわかるのか」という本で冠詞についての話がある。そもそも日本語の「ライオン」と英語の「Lion」は違う概念であると考える。

「lion」は概念としての(つまりライオンというもの)意味のみであるのに対し、

「ライオン」には概念としての意味、また目の前の個体としての意味を含む。

英文を見て見るとlionという名詞が単体ででてくることはない。必ず冠詞や指示語とともにでてくる。lionという名詞が出てくるのは例えば動物図鑑である。動物図鑑に出てくるライオンは傷も汚れも遺伝的疾患をもたない理想的な概念としてのライオンである。this lionは目の前にいるこのライオンである。my lionは私の飼っているライオンである。つまり指示語を伴うlionはライオンという集合から特定の条件を持った個体を指示する役割を持つ。一方で冠詞のaは何の条件を付与せずに集合から個体を抜き出す役割をもつ。

以上をみると日本人が名詞を使うときと比べて外国人は集合から抽出する操作が追加されている。このように言語によって脳内操作が変わるとしたら興味深い。このような操作の有無はコミュニケ―ション上どのような影響があるのか、ここから国民性の違いが説明できるのかなど、言語の違いによって生じる脳内操作の影響を知るという視点で言語学を学んでみたい